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マッチングアプリで知り合った、やたら距離の近い女性。
清楚な見た目に柔らかい笑顔。最初は普通のデートのはずだった。
しかし、会話をしているうちに違和感を覚える。
「実はね、すごくいいビジネスがあって…」
「自由な人生を手に入れた人たちがいて…」
――ああ、これは例のやつだ。
いわゆるマルチ商法。
成功者の話、夢のある生活、仲間の絆。
テンプレのような言葉が次々と出てくる。
そこで俺は、あえて乗ってみることにした。
「それ、興味あります」
「入会ってどうやるんですか?」
彼女の表情が一気に明るくなる。
完全に“釣れた”と思った顔だ。
カフェのテーブル越しに距離がぐっと近づく。
スマホを取り出し、説明が止まらない。
だが、話を聞けば聞くほど矛盾が増えていく。
収入の話はふわっとしていて、具体的な数字は出てこない。
成功しているはずなのに、なぜか必死さがにじむ。
そして俺は静かに言った。
「これ、結局は紹介しないと稼げない仕組みですよね?」
彼女の動きが止まる。
「え…?」
「友達も恋人も全部“勧誘対象”になるビジネスですよね」
さっきまでの余裕の笑顔が、少しずつ崩れていく。
「入会するって言ったのは、ちゃんと聞きたかったからです」
「本当にいいものなら説明できるはずですよね?」
沈黙。
さっきまで饒舌だった彼女が、何も言えなくなる。
マルチ商法の勧誘は、
“疑わない人”には強い。
でも、仕組みを理解している相手には途端に弱くなる。
最後に彼女は小さくつぶやいた。
「…今日はやめときます」
さっきまでの自信はどこへやら。
勧誘する側だった彼女は、完全に立場が逆転していた。
世の中には、甘い言葉で近づいてくる人もいる。
けれど、仕組みを知っていれば簡単に見抜けるものだ。
そしてそのとき――
“わからせられる”のは、むしろ勧誘してきた側なのかもしれない。



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